できることなら禿げたくないです。

六十くらいになったときにですね。
シルバーダンディって言うんでしょうか。

銀髪をたなびかせた、お洒落ジジイに憧れてます。

かつての関口宏さんや星野仙一さんみたく、前髪の分け目辺りにワンポイントの白髪をシュッとこう。
かっこええやないですか。

そしてそこから、山嶺から麓に向かってゆっくりと赤く染まってゆく紅葉のように、年を重ねてゆくごとに黒から白へゆっくりと上品に白髪が広がってゆき、やがて一面、白銀の世界へ。

なんて風になったらいいなと思ってるんですけども、最近やたら頭皮が痒くて抜け毛が多いんですよね。
こりゃもう、禿げたことのない僕でも解ります。

きてます。

なんで禿げたくないかって、そりゃあお洒落じゃないからです。

髪の毛が無いと、その分眉間の皺とか、オデコの皺が目立つでしょ。
イカつい顔に見えます。

ただでさえ、目が窪んだ彫の深い濃ゆい顔なので、厭なんです。
イカつくなるのが厭なんです。

禿げたくない。

でも抜け毛は止まってくれません。
そこで僕は考えました。

じゃあ、禿げてもお洒落だったらいいんじゃないの。と考えました。
なんと妙案でしょう。

早速、芸能人で禿げててもなお、お洒落な人はおらんかなと探しました。
すぐ見つかりました。

渡辺謙さん。

ク~ッ!かっくい~!

なるほど。
この人の髪形を真似ておけば、禿げてもめっちゃお洒落っちゅうことですか。
我ながら、なかなかの妙案を思いついたものです。

これで禿げの悩み解消です。

すぐに行きつけの美容院に行きまして、スマホの画面いっぱいに渡辺謙の画像を表示しまして、「こんな感じでお願いします」と言いますと、店長「渡辺謙さんですね」と言ったあと、しばらくじ~っと見てまして、「長めのスポーツ刈りね」とぼそり。

しかし僕は聞こえないフリをしました。
店長のアンビリーバボーな言葉を受け入れたくありませんでした。

だって、僕の妙案がただのスポーツ刈りだなんて信じたくなかったから。
〝渡辺謙だから格好いい〟とか、思いたくもなかったから。

でもカットしてもらうと、これがなかなか

気に入りました。長めのスポーツ刈り。

カッコつけてみると、自分では自分が渡辺謙に見えてます。

思惑通り、これでもう禿げるのが怖くなくなりました。

むしろ今、もうちょっと渡辺謙みたく禿げ上がらないかと
禿げるのが待ち遠しくなってるほどです。