前回、リビングから見える主庭を紹介させていただいたんですが、
実はその主庭に到る前に、客人を迎えてくれる庭があります。

前回の記事は…
生野丹波石がそびえ立つ庭①
生野丹波石がそびえ立つ庭②
生野丹波石がそびえ立つ庭③

それは数寄屋門の踊り場のスペースです。

 

数寄屋門をくぐると、桂離宮型の雪見灯籠がお出迎え。

 

灯籠。ええ味出てるでしょ。
ええもんは質感が違います。
品格があります。
それは実物を見なくとも、写真でも伝わると思います。

ちなみにこの灯籠は新品です。
中古じゃありません。
新品でこの味。
十年、いやそれ以上か。
風通しの良い木陰で寝かせてあったヤツです。
時間を費やすことでしか出せないこの味。
こんな材料を使って庭をつくらせてもらえる自分は造園屋として幸せもんです。

 

実はギリギリまで、ここにはこの灯籠ではなく、
三角雪見を置くことになってたんです。

 

これも同じく桂離宮にある三角灯籠と同型なんですが、どうですかこのフォルム。
三角形なんて珍しいでしょ。
初めて見られた方もおられるかも知れません。

お施主さんに、私がずっと推してた三角雪見。
なんかね、モッサいところがカワイくないですか?
このモッサカワイイところが個人的に好きなんです。
三角形になっただけで、なんなんでしょうかね。
この落ち着きのなさは。
厚みのない、ふざけた感じは。

四角形や六角形、八角に円形とか。
いろんな形の灯籠がありますが、それらほかの灯籠にはない
遊び心がこの灯籠にはあるような気がします。
そこがちょっと好き。

まぁ、最終的には、モッサカワイイ三角雪見よりも
やっぱりイケメンの六角雪見でお出迎えを。 と言うことでσ(^_^;)

さて。

今回はその他にも灯籠を入れてます。

和室の坪庭と。

 

玄関入ったところの足元の小窓から見えるスペース。

 

ともに着手前のお写真。
そして、ともに広くはない、ちょっとしたスペース。

デザインはこんな感じで提案させていただきまして。

 

絵を飾るような感覚で。
小窓から見える風景を演出する。

出来ました和室の坪庭はこんな感じ。

  

灯籠は松琴亭型の生込み灯籠です。
当初の設計デザインと、六方石の配置は変更しました。
飽きの来ないシンプルなデザインの灯籠です。
今風な庭にもしっくりときます。

ほどよくザラついた肌の小叩き仕上げ。
絶妙な角の丸め具合がグッジョブです。

室内から。

 

明かりを灯すと、それらが更にひき立ちます。

続いて、玄関の小窓から見えるスペースには岬灯籠を。

 

『足元のさらっとしたお洒落な風景』を意識して。

玄関内から。

 

ぽわんとした岬灯灯籠と対峙するは、すっとした立ち姿が美しいトクサです。

庭へ明かりを取るための機能を持った灯籠。
本来は灯籠の火袋から照らすというのが本当の姿なのでしょうが、
イマドキは庭を演出する重要な添景物として、逆にLEDでライトアップしたりします。

以上が今回、取り敢えず完成したお庭となります。
『取り敢えず』と付けたのは、本当の完成ではないからです。

「岬灯籠の背景が『吹付の壁』というのは少し味気ないので、ちょっと何かほしいよね」
といったご注文もいただいておりますし、
なによ
り植物たちがこの場所に馴染んでいってくれなければいけませんし、
苔の生育も気になるところであります。

風通しの悪い所や夜露の当たらない所は、杉苔は根付きにくいからです。

『無駄とも思える努力の積み重ねが美しさを維持する』

ゲーテの言葉です。

これから始まる日々の積み重ねが大事なんだと、気を引き締め直します。

それにしても、なによりお施主さんが庭づくりに大変興味を持っていただいていたことが
我々としては非常にやり甲斐となりました。

施工中、感想やご意見を率直に言っていただいたことが、互いの意思疎通につながり、
微妙な感覚のやり取りもスムーズに進めたのではないかと思っています。
私にとっても、とても勉強になった庭でしたし、思い出深い庭となることでしょう。
本当にありがとうございました。

実は嬉しいことに、お施主様から食事をご招待していただいてるんですよね。
自分で作った庭を眺めながらお酒を呑むのは、これが初めてとなります。

少し気恥ずかしい気分ですが、その日が来るのが、すごく楽しみでもあります。

ともかく、呑み過ぎないようにしないと(^o^;)