堺の鋏鍛冶、佐助さんから手紙を頂いておりまして、5月26日の土曜日に火造りの特別公開を催すことは随分前から知っておりました。

なもんで、通常は『土曜日は営業日』が当たり前の松原造園ではありますが、5月の26日だけは職人全員で仕事をサボりまして、堺まで行って参りました。

仕事をサボるなんてけしからん!!

なんていう怒号が聞こえてきそうですが、今回ばかりは勘弁してやって下さいな。

鋏鍛冶の佐助といえば、その仕事は最早、神の域に達していると言っても過言ではないほどの達人でして。

鉄が鋏になるまでの全工程を全て自分ひとりの手で行っているという鋏鍛冶屋は今や全国でも佐助さんただ一人と聞いています。

その佐助の鋏。

一言で言うならば、パーフェクト。完璧です。
切れよし。姿よし。

まさに細部には神が宿っております。
佐助の鋏に一切の手抜きや妥協は御座いませんから。

そんな佐助さんに、私が初めてお会いしたのは、以前ブログにも書きましたが、今年の一月のこと。

植木鋏研究会in大阪の記事

大阪の友人に誘われて鋏を見に行ったんですけれども、半日ちかく色々とお話させていただきまして、まぁなんと言いますか、技術云々が神の域に入っていることはもとより、佐助さんのお人柄に心底惚れてしまいまして、その日に鋏を即注文。

即注文と言いましても、出来あがるのは最短で11ヶ月待ち。

で私自身、佐助さんとお会いして、大きく感銘を受けたものですから、こりゃ社員のみんなにも、そんな凄い超一流の職人さんと話をすることで、考え方や人柄を学び、心を磨いていってほしいなと。

要するに、小学生の頃に行った社会見学とおんなじです♪

この日は一般公開でしたので、他にもお客さんが沢山訪れておられて、なかなかの盛況ぶりでした。

鋏の本体となる鉄と、刃となる鋼とを一体化させる工程のシーン。

注連縄を張った聖域の中で佐助さんが打ちつける金槌を喰いいるように見つめるみんな。

極めている職人さんの動きって、いつまで見てても、何度見ても飽きないんですよね。
ひとつひとつの動きがせかせかしてない。
むしろゆっくりです。

ゆったりとして、無駄がない動き。
そんな佐助さんを見ているこっちの気持ちが落ち着き、つい惹きこまれてしまいます。

我々の仕事はどうかな。
木に登る動作。鋏を動かす動作。鏝でならす動作。
せかせかしてないかな。
大きく、ゆったりと動かしてるかな。

そんなことを考えながら、ここで大阪の友人「さとちゃん」と合流。

「せっかく大阪に来たら、この際、河内長野の鋏鍛冶屋も行きたいなぁ。だけど、あそこは電車で行けるトコじゃないしなぁ」なんて私が以前に呟いてましてね。

それを聞いたさとちゃん。
なんとワンボックス車を借りて迎えに来てくれたんですよ~。
こんなええ人おまへんで。

で、松原造園一同、さとちゃんのご厚意に甘えまして、わらわらとワンボックス車に乗り込み、さとちゃんの運転で念願の河内長野の親っさんトコに到着。

切りやんだ両手鋏を砥ぎ直してもらったり、親っさんの打った輪鋏を購入したりと、思い思いの目的を達成することが出来ました。

そのあと、ワンボックス車でJR堺駅まで送ってもらいまして、さとちゃんとはここでお別れ。

そう。ホンマにこれだけのために駆けつけてくれはったんですよ~。
こんなええ人、なかなかおまへんで。

そんなさとちゃんのワンボックス車が。

見えなくなるまで手を振りたいのは山々だったのですが、数十分前から我慢していたおしっこに耐えきれず、(ごめんよ、さとちゃん)と心の中で叫びながら、そそくさと駅に入っていった私。

そんな失礼なことをされたにもかかわらず、翌日のブログには我々のことを

『ホントに良い人ばかり!研究熱心で高感度ばっちり羨ましいメンバーです。』

なんて紹介して下さったうえに、あろうことか

『楽しかったので思わず記事にしちゃいました。』

なんて言葉が飛び交う始末。
こんなええ人、そんじょそこらにおまへんやろ。

せっかくここまで来たんで、みんなで新世界で串カツ喰って帰ることにしました。

酒を囲んで話すなんていう機会もめっきり減ってきてますので、普段の仕事中ではなかなか面と向かって言えないことも、この際言っちゃいなよ♪ぶっちゃけちゃいなよ♪という雰囲気を大切にしながら。

真面目な話、佐助さんのような志の高い超一流の職人さんや河内長野の親っさんのような生粋の職人さんと触れることは、本当に大切なことだと思います。

この『大人の社会見学』が、それぞれの社員さんの人生に、ボディブローのように効いてくることを願って。

串カツでボディがもたれました。。。なんてオチは、笑えませんから!!