そうそう。
吉野郷大崎ノ鼻。
鹿児島に行ったなら、絶対行きたかったのに、行けなかったところです。
ここから錦江湾を望むのを幾度妄想したことか。
というのも、明治10年の西南戦争を描いた司馬遼太郎の小説『翔ぶが如く』に書いてあったのを読んでからなんですけどね。
大崎ノ鼻に立ってみると、なるほど風が強い。
私の知人は風のことだけを言ったが、彼が肝心なことを言わなかったことに気付いた。
元来、肝心なことはなるべく口中に含んで言わないというこの土地の古いしきたりを私の知人も見につけていた。
山風や潮風よりも、じつは眺望であった。
この大崎ノ鼻に立つと、濃い群青の錦江湾に浮かぶ桜島の山容とその色彩が、どの名陶をもみすぼらしくさせてしまうほどの凄みを持って迫ってくる。
それだけではなかった。
太陽がちょうど桜島の右肩の上にあった。
そのために桜島をとりまく錦江湾のブルーは濃淡をもって縞模様をなしている。
太陽の真下にあたる右手の海は波がきらきらと跳ねあがって見えるばかりに鮮やかであり、中央の海は逆光のために黒く、海底に怪魚のわだかまるのを想像させるほどに古代的な不気味さをたたえていた。
しかしながら目を左へ転ずると、まったく異なる青の世界がはるかにひらけていた。
海は軽佻なほどに明るく、
「泣こよか、ひっ翔べ」
という上代以来の隼人どもの心を、この青が染め上げたかと思えるほどに陽気であった。

主人公は西郷隆盛と大久保利通。
かつて司馬遼太郎が薩摩隼人たちのことを思いながら見た風景を、自分もこの目で見てみたい。
いつか絶対鹿児島に行ったときは、この『吉野郷大崎ノ鼻』に行こうと誓ってたはずなのに。。。
つい先日、生まれて初めて鹿児島に行く機会が訪れたんですが、なんと間抜けなこの私。
せっかく鹿児島に来たというのに、この場所の名前が全く思い出せない。
それもそのはず。
『翔ぶが如く』を読んだのはもう10年以上前になりますでしょうか。
何度か読み返したとはいえ、メモしたわけでもなんでもない。
ただでさえ記憶力が欠如している私がそんな地名を正確に憶えてるはずがないんです。
嫁さんに電話して、「おい司馬遼の『翔ぶが如く』の…」と言ったって
本を読まないウチの嫁さんには通じないだろうし。
事前にリサーチしてこなかった自分が悪いとすぐに諦めてしまったのですが。
そんときは全然思いつきませんでしたが
よく考えたら、鹿児島の本屋さんに行って調べりゃあすぐに分かったんですよね。
そんな簡単なことが思いつかなかったんだから、間が抜けてるったらありゃしない。
で、この旅行で大変お世話になった武蔵さん。
帰ってから、あとでわざわざ調べて教えて下さったんです。
『吉野郷大崎ノ鼻』だよって。
今度はぜひ一緒に行きましょうねって。
なんて優しいひとなんだ。。。
ハイ。ぜひもう一度鹿児島に!!
いや、熊本に行きたいと思います。
あー、それと。
すっかりブログに載せるのを忘れていたんですが、
この旅行でもう一カ所、武蔵さんに観光に連れて行ってもらった場所があります。
本当は急いで熊本駅に向かわなければ新幹線に間に合うかどうかというところをですよ。
時間のない中、車をすっ飛ばして向かってくれたのは鹿児島県姶良市の蒲生八幡神社(かもうはちまんじんじゃ)にある『蒲生のクス』。
$庭志から庭師へ
日本一の巨樹だそうです。
推定樹齢1500年だそうな。
1500年前といえば聖徳太子が生きていた頃くらいですか。
ふえ~。
こりゃあ、おっとろしい。
いつ動き出したところで、何の不思議もありませんわな。
だってそっくりですもの。
$庭志から庭師へ
ドラクエのモンスター『じんめんじゅ』に。
訪れたのは確か日曜日だったと思うのですが、ひっそりとした場所でとても静かでした。
樹高 約30m
目通り(目の高さの)幹廻り 約24.2m
そばでじーっと見ていると、本当になんだか畏しくなってきます。
$庭志から庭師へ
で、驚くことに、この樹の根元には木製の扉があるんです。
扉の高さは1.2m~1.4mくらいでしょうか。
扉があるということは、もちろん中に入れるということです。
なんと、中は8畳ほどの部屋があるんだとか。
残念ながら、現在は一般の人は中に入ることが許されていませんでした。
ま。入っていいよって言われたって、なんだか食べられちゃいそうな気がして恐くて入れませんケド。
そういえば。
「この土地ほどこの照葉樹(クスノキ)が似合う土地はなさそうだ」
とも、司馬遼太郎氏が『翔ぶが如く』で書いていたのを思い出しました。
尤も司馬さんは降り注ぐ陽の光を決してもらすまいと
モコモコとおびただしく繁茂する力強い樹勢のクスノキを見てそう感じたに違いなく、
このような日本一の老木を見ての感想とは少し違うのだとは思う。
ただ、この老木の子孫も、この鹿児島の土地にはきっとたくさんいるんだろうなどと
とりとめのないワケの分からない感想を、ブログを書きながら思ったりしました。
私も鹿児島は樟(くすのき)がめっちゃ似合うと思うな。